今回のテーマは住宅の顔となる植栽、シンボルツリーの選び方についてです。
記事の後半ではおすすめのシンボルツリーを5つご紹介していますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
マイホームを手に入れ、お庭や玄関前の植栽を自分らしく素敵なものにしたいと考えたとき、どんなところに気を付け、どんな樹木を選べばよいのか、東京のガーデナーとして都市部のさまざまなお庭を見てきた経験から、最新の住宅事情に合ったおすすめの樹木をアドバイスできればと思います。
1、大きくなりすぎるものは避ける
低木~高木まで、樹木の特性を知り10年後どうなっているかをイメージすることが大切です。たとえば常緑で葉っぱもかわいらしくよく植えられているシマトネリコや、和風のお庭の代表格であるイロハモミジやヤマモミジ、ハート型の葉と黄色の紅葉が見事なカツラなどは、十分にスペースがあればとても美しい木ですが、小さなお庭では綺麗な樹形のまま維持することは難しく、悲しい状態のものを目にすることもしばしばです。
2、剪定が利く、切り戻しができる樹種を選ぶ
大きくさせないという意味で、もう一つ大事なポイントが剪定の利く樹種を選ぶことです。木を植えた場合、メンテナンスとして剪定作業は不可欠なものになりますので、一年に1回~2回のメンテナンスで綺麗に保てるものを選ぶべきです。植えたときが一番綺麗だった、というものは選んではいけません。たとえばコニファーなどの針葉樹は上へ上へと伸びる性質があり、切りすぎると枯れやすいので、選ぶ際には十分検討が必要です。またオージープランツの代表的な樹木で人気のユーカリなども剪定で大きさをコントロールするのが難しく、玄関前で巨大化して手に負えなくなってしまっているものなど目にすることがあります。
3、陽当たりが重要
どんなにお気に入りの樹木を手に入れたとしても枯れてしまっては意味がありません。枯れはしなくても元気がなく病気になってしまったり、花木なのにいつまでたっても花が咲かないなど、どんな植物でもまず考慮しなくてはいけないポイントが陽当たりです。その際にはきちんと葉に光があたる高さに陽が入ってきているかどうか、場合によっては株元まで光を受けたほうがよい樹木もあります。また夏と冬では光線の角度が違うので、建物の影などになっている場合にはその点もよく確認しておかなければいけません。午前中いっぱい、または午後いっぱいは陽があたるという環境でしたら、ほとんどの樹木は育つと考えてよいかと思います。生活していると陽が入っているように見えても、樹木にあたっているのは朝の一時間だけなど、思っているよりも少ないことがよくあります。その場合は「日陰」と考え、よく吟味することが必要です。ヤマボウシやヒメシャラなど山の木は比較的耐陰性がありますし、ハイノキなどむしろ日陰でないと育たないものもあります。また日陰では植物の生育が穏やかになりますので、樹種の選択を間違わなければ、長く保てる落ち着いた庭を作ることができます。
1、シルバーティツリー(Leptosperumum brachyandrum)
フトモモ科 レプトスペルマム属
常緑の中低木で放っておけば3~5mになりますが、剪定によりコントロールすることができます。シルバーリーフの涼しげで繊細な葉が特徴で、白い花もつけるので花木としても楽しむことができます。耐寒性ー5℃程度で、比較的寒さに強く関東以南の暖かい気候では庭植えが可能です。ある程度の日陰でも育つのも魅力で、選択肢に入りやすいと思います。メラレウカと総称されるオーストラリアの樹木は常緑で日本の気候にも適応するものが多く、精油が取れることで知られるメディカルティーツリーなど、バリエーション豊かですので、お好みのものを探してみるのも良いと思います。
2、オリーブ(Olea europaea)
モクセイ科 オリーブ属
常緑で樹高は10m~15mになりますが剪定でコントロールが可能です。陽当たりは必要で明るい場所向きですが、西陽が好きで、強い日差しにも傷みません。耐寒性は-7℃程度までは問題なく育ちます。幹は次第に太くワイルドになっていくので、小さな花壇などには少し向きませんが、広めのお庭に植えればどっしりとした安定感があり、立派なシンボルツリーになってくれるでしょう。よく鉢植えやコンテナなどで店舗の植栽などにも使われていますが、根詰まりで葉が落ちて弱々しくなっているものが目に付くので、あまりおすすめしません。きちんと根を伸ばすことのできる場所に植えると美しさが発揮されると思います。またかなり高額ではありますが、スペインなどから輸入された古木のオリーブも入手することができます。樹齢100年を超えた幹の存在感は抜群で、長い時の流れを感じさせる圧倒的な魅力があります。
3、ユッカ ロストラータ(Yucca rostrata)
リュウゼツラン科 イトラン属
すこし趣向が変わりますが、ドライガーデンの人気が高まり、なにより見た目のかっこよさから人気がでてきている植物です。基本的にどんどん上に伸びていき、切り戻しも難しいことから、植えたままの状態を維持することは不可能ですが、一年で数cmしか伸びないこともあり、植える場所さえ間違わなければ大きくなりすぎて手に負えなくなるということはまずないと思います。メンテナンスも古い葉っぱを切ってあげる程度でローメンテナンスで、常に見栄えが良い状態を保てるのはかなりのおすすめポイントです。耐寒性も-18℃と日本全国ほとんどの場所で育てることができ、乾いた土地の植物なので、水やりの心配もほとんどないという日本の住宅事情に最適の植物と言えます。(雪が積もる地域では、湿って根腐れを起こしてしまうので工夫が必要)ある程度の大きさのものになるとやや高額にはなりますが、他の植物には代えがたい魅力があると思います。少なくとも3時間以上、できればなるべく明るい場所が理想ですが、日照条件さえクリアできるのであれば、ぜひおすすめしたい植物です。
4、アオダモ(Fraxinus lanuginosa)
モクセイ科 トネリコ属
日本全国の山地に広く自生していて、株立ちの繊細な樹形はとても美しいです。雑木の庭が流行した際に、山に生えているような自然樹形のものがよく植えられるようになりましたが、さらに多様になった現在の植栽デザインでもぜひ取り入れたい魅力的な植物です。株立ちのものは、太くなりすぎた枝を元から切ることで枝を更新することができますので、剪定でのコントロールが可能です。枝も伸びにくく、葉が茂りすぎてもさもさになるということもなく、切るときはきちんとしたプロに剪定してもらうことをおすすめしますが、とてもローメンテナンスです。
冬は落葉してしまいますが、あまり葉が多くないので、落ち葉は気にするほどではないと思います。落葉樹には季節感を感じられ、葉の落ちた樹形の美しさという常緑樹にはない魅力がたくさんあります。なんとなく常緑を前提に考えている人にも、ぜひおすすめしたい樹木です。
5、ジューンベリー(Amelanchier canadensis)
バラ科 ザイフリボク属
たとえばサクラなど綺麗な花を楽しみたいけど、やはり大きくなりすぎるのが心配という方におすすめなのがジューンベリーです。一本立ちのものもありますが、おすすめは株立ちのもので、成長も穏やかで剪定による株の更新で、サイズをコントロールすることができます。葉が展開する前に枝いっぱいに咲く白い花はとても綺麗で、6月には赤い実をつけ食べることもできます。丸みのある葉も可愛く、紅葉も楽しめるといったように四季の魅力の詰まった樹木と言えます。耐寒性も高く、日本各地で場所を選ばず植栽可能です。陽当たりは良いほうが望ましいですが、ある程度の日陰なら育てることができます。玄関前の小さな植栽地でもきちんと収まるので、すべての人におすすめの美しい樹木です。
さて、以上最新の住宅におすすめのシンボルツリーを5つご紹介しました。
まだまだ魅力的な樹木はたくさんありますので、はじめに挙げたポイントを踏まえながら、お好みの植物を探してみてはいかがでしょうか。
フルヤガーデン 代表 降矢 徹