現在お住まいのマンションが高経年化して、そろそろマンションの大規模修繕の時期だけど、このマンションは建て替えたほうが良いのかな?と考えたことはないでしょうか。
これまで建替えを行ったマンションを見ると、3回目の大規模修繕工事を検討する際(国交省の指針では12~15年1回の大規模修繕を推奨していますので、築40年前後になると思います)に「修繕をする」or「建替えをする」かで検討をしたことが多いようです。
では、いったいどういったところを基準にして判断を行ったら良いのでしょうか。
国土交通省の公表している、「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」を参照すると、以下の検討が必要です。
1.老朽度の判定と要求する改善水準の設定
マンション自体がどれくらい老朽化しているのか、時代に合わせた生活を行うのに対してどのくらい不満があるのか、それに対してどの程度の水準で改善を行うことが良いのかといったことを設定する必要があります。
• マンション自体の老朽度の判定
管理組合自らが行う簡易判定や専門家による老朽度判定を行い、マンションの建物自体の老朽度を診断します。ハードとしての建物の老朽度を測ることになります。項目としては耐震性能のチェックや、水道配管の劣化度合いのチェックなどが重要になります。
• 現マンションに対する不満やニーズの把握
管理組合員がどのような不満点を持っていて、どのような改善ニーズがあるのかということの把握を行います。ソフトとしてのマンションの老朽度を測ることになります。管理組合が自らアンケートなどで組合員の要望を得ることができます。場合によっては専門家に相談して行う必要があります。
• 要求改善水準の設定
上記のマンションの老朽度や現マンションに対する不満やニーズを踏まえ、どの水準まで改善していのかということを設定していきます。例えば、最低限の防水性能の保持や排水管の改善のみで良いのか、耐震性能を向上させることを求めるのか、最新の設備を導入するのかといった項目になります。
2.修繕・改修の改善効果の把握と費用算定
1.の改善水準をもとに、マンションの改善効果を把握して、それを満たす修繕や改修工事の内容を設定し、どれくらいの修繕・改修費用が必要になるのかということを算出してもらいます。修繕・改修の際には下記のポイントに注意する必要があります。
• 修繕・改修の場合には、導入できる設備や性能の向上などで期待した結果が得られないことがあること。
• 同様に、可能な対応と不可能な対応があること。
• 修繕・改修でできうる将来的な寿命を意識しておくこと。
3.建替えの改善効果の把握と費用算定
2.と同様に、マンションを建て替えた際にどのくらいの改善効果があり、どのくらいの費用がかかるのかを算出してもらいます。建替えの際には下記のポイントに注意する必要があります。
• 建物は最新のマンションと同等の水準になるが、取り壊し・新築のコストがかかるため、費用が大きくなること。
• 建替え工事期間中は仮住まい(他の場所での生活)を行わなければいけないので、その費用がかかること。
• 上記の仮住まいを行うために、2度の引越しがあり、労力や費用が伴うこと。
4.費用対改善効果に基づく建替えか修繕・改修かの総合判断
上記の2.と3.を比較して、修繕・改修と建替えのどちらがよりよいかの総合的な判断を行います。その際に、修繕・改修の規模や建替えを行うかによって、下記のように管理組合の決議要件が異なります。
• 軽微変更(現状維持を目的とした修繕はこれに当たります)の場合は区分所有者及び決議権の過半数以上の賛成
• 重大変更(耐震改修や共用部への大きな変更であるエレベーターやオートロックの導入など)の場合は区分所有者及び決議権の各3/4以上の賛成
• 建替えの場合は区分所有者及び決議権の4/5以上の賛成
いずれを選択するにせよ、マンション全体での合意形成を図らなければなりません。総会や管理組合の理事会などで議題に上げて議論をしなければなりません。特に重大変更や建替えの場合には費用が多大になることに加え、より多くの区分所有者に周知する必要があります。また、無関心になりがちな理事以外にも現状の把握をきちんとしてもらうことも重要になります。