中古マンションを購入する時、できれば安く購入したい、でも安さで選ぶと築年数が古くなる、というジレンマで悩んだことはありませんか。そんな中で、古くなったマンションで、建て替え間近のマンションを選べば、安く購入できて何年かしたら新築のマンションに住めるのでは、と考える人もいるのではないでしょうか。
しかしもうすぐ立て替えるかどうか、ということはどうやったら分かるのでしょうか。また、建て替え間近のマンションを選ぼうとした時、何か気を付けたほうがいいことはあるのでしょうか。
そもそも、中古マンションの立て替えは、どのくらい行われているのでしょうか。
国土交通省の発表によれば、平成28年までに建て替えが行われたマンション、および準備中のマンションは252件しかありません。全国のマンションの戸数は633万戸以上あり、一棟あたり60戸としても、全国に10万棟以上のマンションがあることになります。
そのうちのたった252件なので、パーセントにするとたった0.23%、マンションの建て替えがとても珍しいことが分かるでしょう。
そのため、建て替え前のマンションを購入する、というのはとても限られていることが分かるでしょう。
マンションの建て替え件数がこれだけ少ないのには理由があります。
それは、マンションの建て替えには高額な負担がかかるためです。だいたい60㎡あたり、1,000~2,000万円程度かかると言われています。国の補助制度や融資があったとしても、住民の負担は相当なものです。
建て替えが必要、と言われている時点で、築年数はかなり経っていると想像できるので、住民も若い人というより高齢の人が多いでしょう。建て替えたとしても、この先何十年も住むか分かりませんし、2,000万円も払うのであれば、今のマンションを売って小さなマンションに住み替えるほうがマシ、と思う人も多いでしょう。
また、マンションの建て替えを行うには、住民(住んでいる世帯)の4/5以上が賛成しなければ、建て替えは行われません。
そのため、住民の支持を得られず、保留や廃棄になるケースのほうが圧倒的に多いのです。
ではもし、建て替えるとすると、築何年くらいが多いのでしょうか。
東京カンテイの調査によると、過去に建て替えが行われたマンションの築年数の平均は、33.4年でした。
マンションの寿命は、諸説ありますが、だいたい50~60年と言われています。最新の構造のものは100年以上持つとも言われていて、メンテナンス次第ではもっと長いとも言われています。
ではなぜ、実際に建て替えがあったマンションとマンションの寿命に、こんなにも開きがあるのでしょうか。
それは、マンションの建て替えの理由は寿命だけではないからです。
もちろん昔のマンションは、今のマンションと比べて水回りなどの設備がよくなく、30年程度で劣化して水漏れが起こり、建て替えが必要になったマンションもあります。
しかしそれ以外にも、寿命ではなく、建て替えによって高額販売が見込めるとされた場合に建て替えられたマンションも多くあります。
例えば、5階建てくらいのマンションで、駅に近く他の条件もよければ、建て替えて10階にすれば販売できる戸数が増えます。この販売して得られた収益で、建て替え費用が賄えるため、住民の負担も減らすことができます。住民も、負担が少なく新築のマンションに住めるのであれば、ということで建て替えてに賛成し、建て替えが行われたという事例もあるのです。
マンションの建て替えては、実はすぐに実施されるものではなく、検討から含めるとだいたい10年ほどかかります。
まずは、建て替えが本当に必要なのか、ということを検討します。建て替えないといけないレベルなのか、修繕で賄えるレベルなのか、など、専門家の意見を取り入れながら検討します。
建て替えが必要、となった場合、住民へ相談し、合意を得ます。資金面やディベロッパーの候補など、あらゆる面で建て替えの条件をクリアし、住民の賛同してもらえるように計画をします。4/5世帯以上が合意となれば、建て替えが決定します。
建て替えが決定したら、建て替えに向けた組合を設立します。
建て替えに不参加の住民がいれば、その住民に対する権利の売り渡し請求などを行います。
抵当権や賃借権などの様々な権利を、新しく建て替えるマンションに移行することを国に許可してもらいます。
住民は仮住まい先へと引っ越し、マンションを取り壊します。
取り壊しが終わったら、新築マンションを建設し、仮住まい先から住民が戻ってきます。
建て替え件数から見ても、建て替え予定のマンションを見つけるのが難しいことが分かるでしょう。
また、マンションの建て替えはすぐに行われるものではなく、検討の段階から含めると何年もかかるものです。すでにマンションの建て替えが検討されている状態であれば、住民が引っ越すかどうかというのは微妙なところでしょう。条件がよければ引っ越すとは思えませんし、条件が悪ければそもそも4/5世帯以上が賛同しない可能性のほうが高いので、建て替え自体がなくなってしまいます。
となると、もし建て替え前のマンションを購入したい場合は、まだ建て替えの検討がされていないけど、これからされるかもしれない、というマンションを選ぶことになります。
では、建て替えが行われそうなマンションとはどんなマンションでしょうか。
マンションの寿命が延びている今、築年数だけでマンションを選ぶのは微妙なところです。実際に配水管などが老朽化して建て替えが必要になるマンションもありますが、築年数の古いマンションを選んだとして、実際に建て替えが行われるまで何年も古いマンションに住むというのは、住み心地もよくないでしょう。また、建て替えではなく、修繕のみしか行われない可能性もあります。
とすると、老朽化ではなく、高額販売が見込めるための建て替えが行われそうなマンションを選ぶほうが、まだ現実的です。
ポイントとしては、人気のエリアで、さらに駅近ということです。人気のエリアでさらに駅から近いとなると、少々高くても買い手はすぐに見つかります。ディベロッパーとしてもそういった立地のマンションを建てたがっていますから、もし建て替えを狙うのであればそういったエリアから選ぶのがいいでしょう。
また、周りの建物と比べて極端に階数が低いということもポイントになります。周りが10階から15階建てなのに、そのマンションだけ5階建て、というような場合、建て替えて販売すれば収益も大きくなりやすいので、建て替えが検討されやすいです。
さらに、土地にある程度余裕があるほうが理想的です。1フロアに2戸しかないマンションより、1フロアに10戸あるほうが、階数を倍にした時の収益はグッと大きくなります。
これらの条件を満たしたいい中古マンションがあれば、購入を検討してみてもいいでしょう。
建て替え前の中古マンションを購入するのは、実際にはあまり現実的ではありません。建て替え自体、そうそう行われるものではなく、建て替えには10年近く年月が必要なため、建て替え前のマンションに10年も住むということを考えると、自分の住みたいマンションに普通に住んだほうが住み心地はずっといいでしょう。
価格を抑えたいのであれば、古くてリフォームしていないマンションを購入し、自分でリフォームすれば、かなり費用を抑えることができます。
ただ、立地のいいマンションを選ぶことで、資産価値が下がりにくく、築年数が経っても高く売ることができます。もし建て替えがあればさらに資産価値が上がりますし、なくても下がりにくいので、そういった目線で中古マンションを選ぶのもおすすめです。